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スペシャル対談

株式会社トランジットジェネラルオフィス 執行役員 岡田 光氏


空間創造総合企業として、様々な分野でトレンドスポットを創り出しているトランジットジェネラルオフィス(東京都港区、代表取締役:中村貞裕氏)。最近では、渋谷ヒカリエの「THE THEATRE TABLE」、阪急梅田の「CHEER’S」、伊勢丹新宿店の「LADIES&GENTLEMEN」、小林武史氏とコラボしたクリエイティブシェアオフィス「kurkku home」など話題のスポットを立て続けにオープン。今夏には、海外初進出となる世界一美味しい朝食レストラン「bills」ハワイ店をオープン予定。破竹の勢いのトランジットジェネラルオフィスが四国で唯一手がけた愛媛県宇和島市の「木屋旅館」について、執行役員の岡田 光さんにインタビューした。 (場所 大阪 堂島ホテル)

トランジットジェネラルオフィス 木屋旅館
ー2012年4月に、トランジットジェネラルオフィス 中村貞裕さん、建築家の永山祐子さん、リバースプロジェクト 伊勢谷友介さん、茶道家 木村宗慎さん、吉澤保幸さんたちのプロジェクトチームにより新生「木屋旅館」がオープンしましたが、開業して約一年、手応えはいかがでしょうか。

シティホテルでなく旅館なんでどうしてもシーズンに集中します。東京のように稼働率80%、90%という訳にはいきませんが旅館としては稼働率は高いと思いますね。

課題としては、当初予定していたカフェスペースの有効活用ができていないので、もっと地元の方々と協力して取り組みたいです。

ただ、こうやって様々な雑誌にとり上げられているように、もともと中村(トランジットジェネラルオフィス代表取締役)と考えていた目論見、木屋旅館単体というよりも宇和島に泊まる、宇和島をアピールするということはできたと思います。たった1つの建物でまちをこれだけ宣伝することができました。これからも木屋旅館発信の面白い企画があるので注目していただきたいと思います。

木屋旅館 館内
ー地方では地域再生という名の様々なプロジェクトが動いています。岡田さんからみて現状の地域再生の動きはどううつりますか。

少し前までのいわゆる地域再生プロジェクトは、リスペクトするものもありますが、多くはやりっ放しの印象を受けます。例えば、観光、文化、芸術などに関して、ポンとその場所にアート作品を置いて、はたしてそれに意味があるのか? あまりにも需要を無視しているような気がします。

トランジットジェネラルオフィス 対談の様子
ートランジットならではのプロジェクトの関わり方を教えてください。

トランジットは 単に企画してやりっ放しにするのではなく、運営・管理に関与しています。当然ですが、黒字経営をし、10年、20年持続できるように努力をしています。 また地域再生プロジェクトを、地元の方が真剣に自分のものにしていただくには、やはり資本を入れていれていただくことだと思います。今回は地元の方などから資本を集める仕組みづくりから携わりました。

ー様々な地域再生案件がトランジット岡田さんのもとに寄せられていると聞きました。発表できる範囲で、プロジェクトのおおまかな内容を教えてください。

全容は5月中旬ごろ発表しますが、観光列車のプロジェクトがあります。お客様はJR東日本さんです。震災の復興プロジェクトも兼ねて東北の路線を走らせます。

古い車両を改造した、たった3両の観光列車ですが、今までのSLよりの観光列車とは違ったアプローチをしており、エクステリア、サイン、インテリア、料理、食器、アート、音楽などかなり細かいところまでブラッシュアップしてプロデュースしています。八戸から久慈の間を、行って帰って2時間半ほどなんですが、料理だけでなく、料理以外のモノも、おもしろいサービススタイルで提供します。

今回は、東北の食材だけでなく、東北の「人」というものに拘ってチームをつくりました。

3両の観光列車
ー四国の「食」についての印象はいかがでしたか。

特に海のものが印象に残っています。東京ではまず食べられない美味しい魚介類がたくさんありました。ただ、出し方とかサービスの質、決して重厚なサービスをという訳ではありませんが、そのあたりが課題になるのではないでしょうか。食材に関しては、国内だけでなく世界的に食の安全が重要視されているので、四国や九州の食材はかなりチャンスがあると思います。

ー地域再生のために、地元の飲食店や商店が取り組むべき課題は?

飲食店だけでなく、こういったおもしろい取り組みに関わる事に少し消極的な印象を受けました。もう少し積極的に関わっていただいて、共に結果を出す事が出来れば、外からの評価が変わってくると思います。

対談の様子2
ー空間を創造する上で「食」の役割について教えてください。

少し前までは、かっこいいデザインであればよかったのが、今はどう食べさせるか、いわゆる「体験」がポイントになってきていると思います。

高級立ち食いの店にもいえいるように、あれが座って同じ単価であればあそこまで流行っていないと思いますし、空間の見せ方としては立ち食いはキラーコンテンツの1つだと思います。

食は空間を創るうえで、絶対必要なコンテンツですが、それをどう表現し体験させるかが今僕たちに求められているものだと思います。

ー木屋旅館がある宇和島市は、幕末に重要な立場を担いました。宇和島だけでなく四国各地には、すばらしい歴史と文化があります。しかし、現在、地方の硬直的なシステムが、歴史や文化を県外、国外に発信する事を阻んでいるような気がします。LCCやインターネットなどのメディアを最大限活用しなければ、地理的にマイナス面がある四国に、世界から人を呼び込むことは不可能だとおもいますが、どう考えられますか。

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まず地方の前に日本ですね、観光庁が発する観光キャンペーンを見直す必要あると思います。

日本はインバウンド対アウトバウンド比率が悪い国。観光産業に対しての取り組みが遅れていることは言うまでもないです。四国もしかりですが、観光資源が多いこの国は「宝の持ち腐れ」状態だと感じます。

足りないのは、国際感覚をもったコミュニケーション対応力、そして英語力。語学力に関しては、東京は既に北京にも抜かれている、と、先日ある外国メディアから指摘を頂きました。

国として、本気で今世紀最大の産業と言われる「観光産業」に挑んでいかないと、地方への送客もままならないと思います。もしくは、前段の話と矛盾しますが、せめて観光についてだけは、中央から地域分権にして、各地がその「ウリ」の焦点を絞って、国際社会に打ち出すことが必要かもしれませんね。

とある地方だけ、英語教育水準、国際PR力、企画力が極端に高い。なんてことがあっても面白いかもしれません。

既に、日本は観光国として必要な「治安のよさ」「交通インフラ」「観光資源」「気候」「宿泊や飲食施設」は豊富にあるわけですから、あとちょっとのアプローチですね。

LCCの台頭も寄与すると思いますが、日本への入管が簡単になるというわけではないので、ヨーロッパの事例のように「お気軽にアジアから日本に」とはならないと思います。

 

ー地方活性のヒントになります。様々なご提言ありがとうございました。

(インタビュアー:寺田和弘)

 

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岡田光氏 プロフィール

トランジットジェネラルオフィス 執行役員

ヒルトン、ハイアット、ペニンシュラ等の外資系ホテルを経て、2003年トランジットジェネラルオフィスに入社、執行役員に就任。 <クラスカ>、<堂島ホテル>、<木屋旅館>などのホテル&旅館のプロジェクトマネージメント&オペレーションマネージメント、 <The Water Cliff>、<羽田空港JALラウンジ>、<JR東日本 リゾート列車 TOHOKU EMOTION>、<ビーコンタワーレジデンス>、 <インプレストタワー芝浦エアレジデンス>などの、地域再生、空港、鉄道、オフィス、レジデンス、教育機関案件のプロデュース&プロジェクトマネージメント業務を担当。

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