飲食店・レストランの“トレンド”を毎日配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム中四国」

ローカル

【地域活性の現場】徳島の知られざる海の幸の宝庫「椿泊(つばきどまり)」地元に賑わいをもたらす漁師の祭りとは?


徳島県南東部に位置する阿南市は発光ダイオードの生産をしている日亜化学工業などで知られる町である。四国最東端の市町村であるこの町に「椿泊町」という小さな町がある。海沿いにあるこの町は漁業が主な産業であるが、近年は漁業の近代化や資源の減少、後継者の不足、少子化等の問題に合わせて、兼業化、会社勤めも多くなり、過疎化が進行している。今回はこの町の漁師たちが地元に賑わいをもたらす為、漁業を観光資源にしていく為に開催している「漁ぎょ魚祭り」をレポートする。

 

new_DSC_0097 2.jpg
 

その昔、阿波水軍の本拠地があった椿泊は古い町並みが今も色濃く残っている。町中を海に向かい進んでいくと「椿泊漁協共同組合」という漁港が現れる。この漁港が祭りの開催場である。祭りのスタートである午前9時に合わせて現場に向かったが、既に200人を超える人達で賑わっていた。

 

new_DSC_0042.jpg
 

受付では来場者に無料で朝どれの天然わかめを配布。定番だがみそ汁や、ポン酢で食べるのが美味いようだ。女優の水野真紀さんたちが、来場者一人一人とコミュニケーションをとりながらわかめを配布していた。

 

new_DSC_0021.jpg
 

早速メイン会場に入る。いつもは競りがおこなわれている場所だが、今日は産直市場の雰囲気。天然の伊勢エビや鯛、アワビ、サザエなどを販売している。鮮魚は希望のサイズに切り身にしてくれるようだ。漁師や婦人部の方々の手際は見ていて気持ちがいい。子供たちもその様子を興味深げに見ている。

 

場内の一番人気は生しらすとモンゴウイカ。生しらすは、生で食べるなら必ず水洗いが必要である。収穫したてのしらすをそのまま売っているので、洗わないと塩分が強すぎるのだ。食べ方としてはしらす丼がおすすめ。「炊きたてのご飯の上に、生しらすと生卵。そこに醤油を垂らせば最高の漁師飯になる」と漁師の男達は言う。すぐに食べない場合は翌日まで水につけて保管する必要がある。次回食べる時にはさっと湯通しし釜揚げにして食す。生の場合はその日の夕方までに食べないと絶対に美味しくないからとの事。

 

new_DSC_0127.jpg

 

モンゴウイカのおすすめの食べ方はイカフライ。もちろん刺身で食べても絶品。ただフライにして熱を入れることで、程よい歯ごたえになり、甘みも増す。食欲も進むので何個でも食べれてしまう。「さしみなんて美味いに決まってる。それはイカに限った事ではない。調理してさらに美味しくなるのが椿(つばき)のイカ。」と婦人部のおばちゃんは自信満々に語る。さらに注目は足赤エビの網焼き。二本で300円。焼き上がってから塩をふってくれる。エビのみそと程よい塩分が絶品。ビールが飲みたくなる。ちなみにアルコールは売っていない。(売り出すと大変な事になると関係者。喧嘩がはじまるらしい。)

 

new_DSC_0035.jpg

 

会場はどこも人だらけである。しかし、これだけの来場者は皆何処から来ているのだろう。聞いてみると、鳴門市や徳島市、小松島市に藍住町。県外客はほとんど居ない様子だ。告知も大々的にはしていない。だからなのか全体の8割が地元阿南市民と椿町民だ。もっと呼びたくないのかと思う。関係者は「もちろん来てほしい。どうやったら人が集まるのか? まあでも地元の人が喜んでくれたらいい」とはっきりしないお答え。しかし「記事なりなんなりどんどん取り上げてね」と言う。おもしろいイベントだがやはり発進力が弱いと思う。その後、場内で魚とのふれあいコーナーを発見。小さなサメを握ってはしゃぐ子供に、エイを握ってはしゃぐ子供。プラモデル感覚で戦っている。巨大な黒魚は女の子3人で必死に持ち上げるも支えきれない。「普段は沖に生息する魚を自分の目でみて触って漁業に海に興味をもってもらいたい」とのこと。

 

new_DSC_0173.jpg

 

いよいよメインイベントの魚のつかみ取りがはじまる。参加は子供のみ100名。しかし、案の定始まると親が手を出し始める。「鯛や!!鰆や!!でかいのいけ!!おい!!熱帯魚なんていらん!!」小さくてかわいい魚を捕ろうとする子供は、はっとして大きい魚にターゲットを絞る。だけどうまく取れない。結果、暴れる巨大魚のお陰で皆水浸しになる。そんな姿をみて見学客は大笑い。なんとも微笑ましい様子だ。こちらも自然と笑顔になる。つかみ取りは一人一匹である。しかし親は関係なく何匹も取る。そんな事をしていたら漁協関係者が注意しにやって来た。それをも無視する親たち。そして漁師と親の取っ組み合いが始まる。輪をかける見物客。ここでも皆笑顔だ。恐ろしいがなんとも人間味がある姿だ。

 

 

new_DSC_0203.jpg

 

椿泊の漁師や町民は皆豪快に笑う。遠慮がちに話す人などいない。70代の漁師が酒を片手に接客、でもお客が来ればしっかりとそれぞれの魚の特徴、扱い方を丁寧に説明する。もちろんおまけも忘れない。売れ残ったサザエはその場で調理して帰宅するお客に振る舞っている。皆、笑顔、笑顔、笑顔。まだ二回目のこの祭りだが、もっと外向けに発信していけば、椿泊の伝統的な祭りになっていく可能性を秘めている。(池添翔太)

ローカル一覧トップへ

Copyright © 2014 FOOD STADIUM ISLAND INC. All Rights Reserved.