ー広報としての役割とは?
テレビや新聞社を使ったPR活動が主ですね。あと店内のイベントは定期的に仕掛けています。お客さんの声が拾える貴重な場ですからね。現在好評を得ているのは高知出身で作家の吉田類さんとコラボレーションしたお酒の企画です。ショップの地下1階にあるコーナー「とさ蔵」には高知のお酒が各種取り揃えられています。その一角に、日本酒をお猪口1杯150円から提供している「ためし酒」コーナーがあるのですが、その「ためし酒」のコーナーに吉田類さんセレクトの利き酒セットを展開しています。女性客にも好評ですね。会社帰りに気軽に立ち寄って頂けています。
ーメディアや地元出身の有名人との繋がりは重要ですね。どのようにして企画を通すのですか?
基本的な事ですが、自ら商材を持ち込み「情熱」を持ってプレゼンを続ける事です。そこにテクニックなどはありません。私自身も、高知に対する「情熱」があるから繰り返し、繰り返し、提案し続ける事が出来るのだと思います。地道ではありますが、マンパワーも時には必要だと思います。
ー地産品を打ち出す上でのポイントはありますか?
勘違いして欲しくない事はお店が銀座にあるとはいえ、そこに商品を置けば売れる訳ではありません。広報活動では買いたいと思う人が集まるような仕組み、情報発信の仕方が大事です。勿論、最初から全て完璧に出来る訳ではありません。広報活動を続けている中で、このネタだったらこんな結果になるだろうという予想も出来るようになります。企画イベントも同様ですね。商品やお店のPRの為、同じイベントを続ける事に意味はある。ただしこの場合は全く同じ、イベント内容では駄目です。1年目は面白いです。でも2年目、3年目は同じイベントをするにも他の要素を巻き込む必要があります。2年目の今回は・・・とか、3年目の今回は・・・といった触れ込み、見出しが大事です。
ー広報活動を実施するタイミングを教えてください。
出来上がった商品や企画を広報して欲しいといわれることがほとんどですが、本来は広報は企画段階から携わらない結果は出ません。実際の広報活動は商品や企画が完成してからですが、広報活動するときを想定した視点で意見を言わせてもらって一緒に組み立てていくことが大事です。
ー各自治体も広報活動には力を入れているとは思いますが、課題はありますか?
一元化の広報できる体制づくりが必要です。食べ物のこと、観光のこと、工業技術 のこと、行政はそれぞれ管轄がことなります。でも、情報を受け取る側からしたら、 それってあまり関係ないですものね。常に横の動きを見据えて、一丸となって発信 できる広報体制が組めるように働きかけていきたいと思います。
ー野戸さんご自身の目指すべき夢はありますか?
具体的なところでは、新聞社時代にみた北川村のゆず畑の生産者さんの力になりた いです。もちろん、欲を言えばユズだけでなく、高知のすべての生産者さんを笑顔 にしたいとも思います。作っているものの中身や規模によって売りたい量も違えば、 売りたい先も違う。それぞれのニーズにあったカスタマイズ広報の仕組みを作るの が目標です。 上手く行かない事もありますが、銀座という最前線にこのショップがあるから高知の魅力を発信し続ける事が出来ています。国内のこの銀座にお店があることに意味があります。
ー今後の取り組みを教えてください。
5月30日から東京タワーとの取り組みがあります。「東京タワーのハイボールガーデン」でサントリーの角ウイスキーに高知のゆず果汁を使う企画があります。去年は7月のみの限定企画だったのですが好評につき、今年は5月30日から開催します。高知だけが発信するのは難しいので何かメジャーな物と組み合わせる事で東京の人達に訴える事ができると考えています。また、7月、8月は3周年キャンペーンを走らせますので、是非期待してください。
今は地域に風が吹いています。ただし、それも飽和状態になってきま した。いかに独自性をもって生き残っていけるか。まさに広報の力が試されている 時代ですね 。
ーPRの役割とその重要性が良く分かりました。ありがとうございました。
(インタビュアー:池添翔太)
野戸昌希氏プロフィール
東京都江戸川区出身。新聞社時代に地域PRを扱う部署に在籍。地域の生産者の現状を見ている中で、母方の里である高知県を訪れる。その時に出会った生産者の思いに触れ、自らのルーツでもある高知県の為に貢献したいと思い、その後一般社団法人高知県地産外商公社に入社。現在は、銀座にある高知県アンテナショップ「まるごと高知」の広報担当ディレクターとして活躍する。