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徳島県の山間部に位置する上勝町は、人口約1700人の小さな町だ。「持続可能な地域社会」をテーマに、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、消却・埋め立ごみをなくす、「ごみゼロ」の理念を１０年に渡り町全体に浸透させてきた。町内にはごみ焼却所はなく、ごみ収集車も走っていない。ごみ集積所に住民自らごみを持ち込み、34種類もの分別を行う取組みが浸透し、再資源化達成率が８割となっている。その取組みに全国の地方自治体や海外からも視察に訪れる程、注目を集めている。

そんな上勝町で、５月３０日（ごみゼロの日）にマイクロブリュワリー「RISE&WIN Brewing CO. BBQ&General Store」がニューオープンした。緑の山々が取り囲む場所に突如現れた、高さ8.1mにも及ぶ美しいファサードに釘付けとなる。同店は、マイクロブリュワリー（クラフトビールの醸造所）、テイスティング・スタンド、BBQガーデン、量り売りを行うジェネラルストアから構成され、自然溢れる美しい景観を守りながら「持続可能な地域社会」を目指す上勝町のこれからを象徴するような施設となっている。

テイスティング・スタンドではカウンター6席、テーブル8席、テラス4席の計18席を用意し、出来たてのビールを味わう事が出来る。現在は同町産の「ゆこう」の皮を香りづけに使用したフルーティーな「ルーベンホワイト」（１パイント850円）、ブリティッシュスタイルの「ペールエール」（１パイント850円）の２種類を提供する。今後もビールの種類は増えていく予定。ビールは瓶での販売の他、オリジナルの瓶や持ち込みの瓶にお好みの量を入れる、量り売りの販売も同時に行う。ゴミを出さない売り方を提案する取組みだ。

フードメニューは、四国産の鹿肉を使用し、鹿肉と豚肉の比率を季節ごとに調節している「ジビエソーセージドッグ」（1200円）、「プルドポークサンド」（850円）徳島産豚肉を使用した「ポークソーセージドッグ」（1000円）をプレートで提供。プレートにはキャロットラペや、上勝産野菜の自家製ピクルス、ポテトフライも付いている。デザートには「R&Wオリジナルグラノーラヨーグルト ジンジャーシロップがけ」（450円）、「上勝ゆこうシャーベット」（350円）も用意し、上勝町ならではのメニューが揃う。テイスティング・スタンドはメニューの充実ぶりと、客単価3000円とリーズナブルな価格設定に来店客が絶えない人気ぶり。

同店の店名にも入っている「BBQ」は、BBQガーデンで提供され、1人4000円（ワンドリンク付）の予約制で受け付けている。BBQメニューは「ジビエソーセージ」、「徳島県産地鶏のサラダ」「ポークバックリブ」「上勝産野菜グリル」を用意し、釜浅商店（東京都台東区）のBBQグリルで焼き上げられる。徳島県産の地鶏や四国産の鹿肉などの他に、予約時に猪肉も追加できるようになっている。メニューに使用する食材は徳島県産にこだわり、原価率を度外視した食材を集めている。オープンして2ヶ月にしてリピーターが続出し、週末は予約を入れるのが困難な程の賑わいを見せ、これまで上勝町に来る機会のなかった人達を町内に呼び込む事に成功している

プロデュース＆プロジェクトマネジメントは「TRANSIT GENERAL OFFICE INC.」（東京都港区）が担当。建築設計を「中村拓志＆NAP建築設計事務所」（東京都世田谷区）が手掛けた。施設に使用した建材は、上勝町で出た古材を再利用している。

上勝町産柑橘の「ゆこう」の果汁を絞った後の皮を使用したクラフトビール、クラフトビールの量り売りに使用するリターナルボトルデザインなど、同町が取り組む「リサイクル」「リデュース」「リユース」の3R推進が各界のクリエイティブチームによって形となった。同店マネージャーの新居氏は「ゼロ・ウェイストをより身近に感じ、楽しみながら体験できる施設になっています。上勝町の自然の中で、おいしいビールとBBQを味わっていただきたい。」と話す。

中村拓志＆NAP建築設計事務所の中村拓志氏は「リサイクルやリユースがかっこいいと感じられる建築になった。この施設に込めたメッセージが見た人に伝わる事を願っている」と話し、多くの人の来店を呼び掛ける。

今後は、ビールの種類が増えていく予定もあり、上勝町でビールとBBQを楽しむ人が増え人口1700人の町が更に賑わう事を期待したい。

（取材＝岡本 哲弥）

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