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四国のキーマン

「都心から高知の魅力を発信し、高知の財産を守る」野戸昌希さん(前編)


銀座に構える高知県アンテナショップ「まるごと高知」。活気のあるスタッフが店中を駆け巡り、店頭には高知の魅力ある産品が並んでいる。ショップの二階にある「おきゃく」は高知で育った食材を使い、地場料理を提供するレストランだ。鮮度の高い高知の食材を使用し、昼時は行列もできる。またこの店のスタッフも同様に活気に満ちあふれている。人もモノも、全てから高知の魅力を感じる事が出来るこの”場”は、有楽町界隈にひしめきあう各地方のアンテナショップと比べ圧倒的な集客数を誇る。

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第1回目の四国のキーマンは野戸昌希さん発進力のあるこのアンテナショップの広報担当ディレクター 野戸昌希さんに話をきいた。




 ーなぜ高知県の広報を? 野戸さんがアンテナショップに配属されることになった経緯と合わせて教えてください。

新聞社在籍時に全国の自治体の動きを取材する、地域のPRを扱う部署におりました。「地域ブーム」といわれる言葉が使われ出す前の事です。都道府県会館などを回るのも自分の仕事でした。現場を駆け回る日々で、その中に高知での取材があったんです。母親の地元が高知の四万十にある中村であった為、高知の取材は思い入れが強かったですね。気持ちの良い土地でした。

高知も含め他の地域も、東京で発信すると、地方の方が非常に喜んでくれます。地域の事を考えるきっかけとモチベーションになりましたね。当時は観光といえば、行政の中でも端っこの存在、観光はお金にならないという概念もあったと思います。今でこそ高知も産業振興計画の真ん中が観光になっております。ただ、自分のやれる事がこの動きの中にありました。

当時東京は六本木ヒルズ、丸ビルが出来た時代。その中心のメディアに身を置いていましたので”過疎化”という言葉も理解しているつもりでした。

しかし、現場でショックを受けました。現実の地方の状況は自分が理解しているよりひどかったのです。温泉のコラムの為、ゆずの産地、高知の北川村に行った時のことです。高知の山の町は初めての訪問でした。ただそこには想像していた美しい風景はなく、体の弱い70歳代の高齢者の方がゆずの収穫を続けていました。北川村のゆずは加工用が少なく、一つ一つを青果として出していました。「それが村の誇りだから」と生産者の方は言いました。本当に傷一つない綺麗なゆずです。他にも続ける理由はありました。「ゆずを取らないと木が駄目になる。木が駄目になると山に影響を及ぼし、山が崩れてしまう」作物に対する誇りと資源を守るために死に物狂いで頑張っていらっしゃる姿がそこにはありました。その時、”高知を、地域を助けないと”という気持ちになりました。そして、地方を助けるには魅力ある商品にストーリをつけ発信し、農家の方には出来ないメッセンジャーにならなければと思いました。

そんな時、高知のアンテナショップが銀座に開業するにあたり広報が必要という話が舞い込み、オープンと同時に広報担当に配属されました。

ーアンテナショップを開くきっかけとなったのは県知事の取り組みですか?

その昔は「高知方式」という民間企業が県産品をPR外観new.JPGし、それを県がアンテナショップとして公認するという仕組みがありました。当時は 評価されていた取り組みです。ただし、現知事は民間だけでなく官庁も積極的に観光PRを実施すべきという情熱がありました。地産地消だけではなく地産外商でしかも付加価値をつけて県外のお客に提供する事で、地方が潤うような取り組み実施するという政策を掲げました。その取り組みこそが現在のアンテナショップの始まりです。


ーアンテナショップの来客数はどのような推移ですか?

初年度程の盛り上がりはないです。ただ各県のアンテナショップに比べるとお陰様で集客も売り上げもある程度確保出来ています。要因は多々あると思いますが、広報専門がいるアンテナショップは高知のみです。それが力になっているかと思います。

ーレストラン「おきゃく」の反応はいかがですか?

お陰様で盛況です。東京の人達だけでなく高知の人もたくさん来店してくれています。味のクオリティーも現地に引けをとらない仕上がりになっています。高知の人は食にこだわりが強いからこそ。料理人達も日々鍛錬をし、真剣に取り組んでいます。

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ーオープン後のエピソードなどお聞かせくださいカツオのたたき.jpg

オープン日の事は忘れられません。大盛況でした!オープンの年は”龍馬伝”放映の年でしたので、記念硬貨として龍馬硬貨を作成しました。おつりで配っていると、記念硬貨を求めた行列ができた程です。龍馬ブームのなかでのデビューが、何より最高であり素晴らしいスタートがきれました。

 

 

 

ー広報として特に喜びを感じることをお聞かせください

生産者さんから、直接「野戸さんに相談がある」と言われた時に喜びを感じます。「こんな商品ができた」「サンプルを見て」とか言われると幸せになります。最近はそんなふうに自分の所に情報が集まり、思いが集まるようになってきたので嬉しく思います。またメディアの視線に立っていながら、高知の事を知っている自分は、強い思いで動けます。高知が本当に好きなので(笑)

(後編に続く)

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