飲食店・レストランの“トレンド”を毎日配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム中四国」

四国のキーマン

「VUSIDO精神で夢を実現させる! 」 株式会社ブシド 代表取締役 片岡 良氏


愛媛県を中心に中四国でラーメン店を展開している「株式会社ブシド」。ラーメン屋以外にも洋食、イタリアン、お好み焼き、鉄板焼き、和食の店など幅広いジャンルにも進出している。塩ラーメンが名物になり、平成22年度 1000人のラーメン好きが選んだ愛媛のラーメン店人気ランキング総合1位にも輝いている。店舗はレトロな雰囲気を基調としているが現代風にアレンジした店舗になり、どこか懐かしい印象を受ける。店内は20代~30代スタッフがメインで活気に満ち溢れている。また会社HPには今後のビジョンも公開しており、飲食店とは別事業になるブライダルや温泉旅館を手掛けようと考えている。

りょう家 小松島店.jpg






第2回四国のキーマンは片岡良氏。株式会社ブシドの代表取締役として四国、瀬戸内を中心に全31店舗を運営している片岡氏に話を聞いた。




―なぜラーメン屋を始めようと思われたのですか?

片岡社長1.jpg私が20歳の時、父親が経営する寿司FC店の業績が悪化して、大学を辞めて愛媛に戻らざるを得なくなりました。借金2億円の返済のために考えた挙げ句、「ラーメン屋なら儲かるだろう」という安易な思いでラーメン屋の出店を決めましたが、実は子供の頃からラーメン屋に行くのが嫌でした。だから、自分が行きたくなるようなラーメン屋を目指すことにしたんです。早速、本屋で『ラーメンの作り方』と『ラーメン屋を開業するには』という2冊の本を買ってきたものの、私には料理の経験などありません。そこで、古い記憶に残るおばあちゃんの味を思い出し、毎日鶏ガラを焚いて、野菜を入れて、スープの試作を繰り返すことに。冗談みたいな話ですが、出店決定からわずか1カ月、改装期間3日という強行スケジュールを乗り切り、なんとかオープンにこぎつけました。試作はたったの15回程度。店舗の内装や美装も全部自分たちでやり切りました。

―飲食業のノウハウ0(ゼロ)からのスタートで苦労したことは何ですか?

オープンしてからは、中華から和食、洋食、フレンチ、イタリアンなど、あらゆるジャンル本を買ってきて勉強の日々でした。営業をしながら毎日試作を繰り返し、定期的に東京の美味しい店にも足を運びました。3~5年くらいは四国で一番ラーメンのことを考えたし、勉強した自信はあります。それでもしばらくは金銭的に全く余裕のない日々が続きました。散髪屋に2年以上も行けず、自販機やコンビニでジュースを買うのさえためらい、新店のオープンともなれば100円ショップへ大量に買い付けに行く・・・。ノウハウも時間もお金もないまったくの素人が、自己流で試行錯誤を繰り返しての出店でした。しかし、私のゴールはそこにあった訳ではありません。ラーメン屋の開業だけが終着点であったなら、それ以上はなかったと思います。ラーメン店の開業は目的であり、通過点。人は、夢を抱いてこそそのための目的が達成され、明確なビジョンを描いてこそ更なる発展への片道切符を手に入れられます。両の眼はしっかりと見開き、前を見据え、日々の努力を重ねる。それが、いずれは業績となり、お金となり、経験や人脈という財産になると思うんです。走り続けて十数年経ちましたが、かつては嫌いだったラーメン屋にいる自分を、今は誰より楽しんでいるのかもしれません。

―株式会社ブシドの経営指針について教えて下さい。

ブシドの経営のモットーは「一番のリスクは時間」。決めたらパッと行動。「まあまあいい状態」ならやめます。もちろん、新しいことをやれば失敗するリスクはありますが、失敗からしか学べないこともたくさんあります。同じ時間を使うなら、守ることよりも攻めることに時間を使いたいんです。人生初のレストランの話ですが、ここは3年半営業して、ずっと昨対(昨年対比)150%の優良店でした。しかし、12月にクリスマスを盛大にやろう!と50万円程かけて食器などを揃えたにもかかわらず、年明けの2月に店を閉めます。「将来性がないから、もう閉店しよう」というのがその理由です。同じように、スタッフのやる気が見えず、お客さんに迷惑がかかっていると思えば閉めます。それはお店のため、そしてお客様のため。問題を解決するのに必要なエネルギーと、問題から逃げて受けるストレスは同等です。ならば、問題とは前倒しして向き合いたいんです。成長とは「変わること」。変化を恐れてはいけません。

 

―サービス業においてブランディングは一つの大きな柱になるかと思いますが、それについてはどうお考えですか?
片岡社長6.jpg
「お客様の楽しさを創造し、全従業員が共に成長し合える会社を目指す」――これがブシドの企業理念です。この企業理念には、「お客様を楽しませるためには、まず自分たちが楽しんで働かなくてはならない」という思いが込められています。苦しいことや悩み事があっても、それを楽しめるようにならなければ、心からお客様を楽しませることはできません。人間力を高めることこそがサービスの向上に繋がり、多くのお客様の笑顔に繋がります。頑張っているスタッフの姿を見て、お客様の心に栄養を与えられるような店作り。先程お話した店の「引き際」のジャッジは、まさにこの企業理念に即した考えがあっての決断です。そうして1店舗1店舗がブシドクオリティーを維持し続けることが真のブランディング。ブシドのブランドづくりは、お客様と共にあります。

―仕事への姿勢、仕事の取り組み方で、スタッフに伝えたいことは何ですか?

「自分は完全なド素人だったけど、ここまで来た。誰でも頑張ればできる。私はスペシャルじゃない」。これはよく私が若いスタッフに言っている言葉です。創業から10数年間、24時間、いかに仕事以外のことを排除できるかということを考えていたので、寝ている間も「何かひらめかないかな?」と、寝る前に問題をインプットして寝るなど、とにかくストイックでした。でも、当時の私にはそれが必要な時期でした。それを人生のどのタイミングでやるのか。人生を変えたいと思うならそれくらいはやらないと。そうやって私が経験してきたことを、なるべく若い人に伝えていくのが、次に私に課せられた使命だと思っています。若い人の意識が変わらないと日本は変わりません。人間は誰でも良いものを持っているし、引き出せるかどうかは会社の責任。自分の役割を理解させて、自分なりに頑張らせたいのなら、あとはどれだけ会社が上に引き上げてあげられるか、ということになるでしょう。

―昨今、若者の定職率の低下が社会問題にもなっていますが、片岡社長にとって、「働く」とは何ですか?

最近、「ワークライフバランス」という言葉をよく耳にします。仕事とプライベートの調和を図ろう、という動きです。しかし、若いスタッフには「若いうちは働こう」と言っています。心身共に若々しい時に一生懸命仕事をし、スキルの向上、職場内外での人望獲得に努め、40~50代になった時にはじめてワークライフバランスが成立すると考えるからです。そのための指針として、ブシドには「向上八訓」というものがあります。例えば、「自分と関わる全ての人に幸せを与えよう」。お客様だけを大切にしていればいい、ということではなく、毎日店舗へ素材を卸してくださる業者の皆様、生産農家の皆様、ご近所にお住まいの方々など、立場は違えど、ブシドを支えてくださる全ての方の幸せを願うものです。これはいただいた縁や恩を大切にするという日本人ならではの文化。「いただいたもの」に心から感謝をし、魂を込めてお返しをする――昔から当たり前であったはずのことを、当たり前にできているのか?それを問うのがブシド(武士道)イズムです。「人の幸せを本気で願える、ブレない自分」――自身が力を身につけ、自分の人生をコントロールできる当たり前の人になって、はじめて人の幸せを想え、そしてその幸せは感染していくものだと思っています。

 

―若い人たちの間では、「なぜ働くのか?」ということに疑問を持つ傾向もみられるそうですが、会社と社員の在り方についてどうお考えですか?
片岡社長11.jpg
私は、会社とはみんながより幸せになるためにあると思っています。幸せは与えられるものではなく感じるもの。成長している者が感じられるものであり、それが実現できるだけのステージを用意してくれるのが会社です。現代人の思考のトレンドは失敗したがらない傾向にあると言われますが、それは頑張らなくても「程々に」生きてこられているから。私はその「程々でいいや」という概念を叩き壊したいんです。そのために、スタッフには自燃型、つまり「自分で自分を成長させたい」という意欲のある人になってほしいと思っています。しかし、命令してやり方を教えると受け身になるし、怒られなければいい、という方向に行きます。そういった管理型ではなく、なるべく自主性を重視しながら、どれだけスタッフに失敗させてあげられるか。その環境を準備するのが私の仕事。ブシドには個々の頑張り次第で、明るい未来を切り開くだけのステージの用意があります。

―株式会社ブシドの今後の展望をお聞かせください。

今後、ブシドは全国展開から世界進出していく予定です。もっと大きな夢で言うなら、日本になくてはならない会社でありたいです。私はいつも、私が死ぬ時に「あなたに会えて私の人生が変わった」という人をいかにつくれるか、ということを思っています。「食」を通じて私の意思、想い、哲学を広く伝えていくこと――ブシドのブランディングの源流はそこにあります。外食産業は、言うならば「付加価値産業」。食事という行為の本質が「食物を食べて栄養を摂取すること」であるならば、わざわざ家で食事をするよりも高いお金を払ってまで外食をすることに意味はありません。食べ物をいただけることに感謝し、その命をいただいた以上の価値を生み出し、後世に伝えることが必要なんです。食べてくれる人の五感を通じ、心にも栄養を与えるのが飲食店の存在価値であり、意義であると考えています。

 

―四国からの今後の動きが楽しみです。さらなる飛躍を期待しています。

(インタビュアー:上野真弘)

 

片岡社長4.jpg片岡良氏プロフィール




高知県出身。親が愛媛県で寿司FC店を営んでいたが、2億円の借金を抱える。大学を中退し、すぐに「らーめん工房りょう花」をオープン。順調に売り上げを伸ばし、平成22年度に1,000人のラーメン好きが選んだ愛媛のラーメン店人気ランキング総合1位に輝く。ラーメン屋以外に「お好み焼き たろめ亭」「洋食屋からす」「鉄板焼き うまかぜ」「和食・瀬戸内 とらいし」「イタリアンバル TORAISHI」と幅広い業態を展開している。




 

四国のキーマン 一覧トップへ

Copyright © 2014 FOOD STADIUM ISLAND INC. All Rights Reserved.