松山市の西部に位置する三津浜地区はまるで時間が止まったように感じる町だ。複雑に入り組んだ路地が縦横に走り、歴史的な建造物も多く見られるこの地域は、第二次世界大戦のときの松山空襲を奇跡的に免れた。よって今も昔ながらの町並みが色濃く残っている。
そんな歴史ある三津浜の商店街の中にひっそりと佇むのが「田中戸」だ。漆喰の壁にアンティークの家具が並ぶ店内は穏やかな雰囲気が漂う。オーナーの田中氏は三津浜地区から海を隔てた反対側にある、"怒和島(ぬわじま)"出身である。故郷の素晴らしさを広く伝える為、島に一番近い玄関口であるこの地に店をオープンさせた。
「怒和島はいい意味で何もない島。観光客向けの施設等、全く整備されていません。けれど本当に昔ながらの文化が生きる場所。穏やかな時間が流れるいい島なんです。」島の魅力はそれだけではない。瀬戸内海で穫れる新鮮な魚や、島でたくましく育った有機野菜や柑橘類も豊富にある。
店の軒先では島の食材を量り売りで提供もしている。旬の季節に収穫した甘夏、桃、レモンや玉ねぎなどを一個からでも手に入れることが出来る。まさに怒和島のアンテナショップといったところだ。
店に並ぶメニューは至ってシンプルだ。怒和島産のみかんやレモンを使った手絞りジュースやソーダといったドリンク類と、オーナー手作りのフルーツケーキ、チーズケーキなどのスイーツのみ。新鮮なフルーツを贅沢に使ったメニューはどれも味わい深く、島の魅力がつまったメニューである。
またオーナーは故郷だけのPRをしているのではない。店を構える三津浜の商店街の為、地域活性のコミュニティーも立ち上げている。地元民と共に町に、にぎわいをもたらせるよう積極的な活動をしている。時期によっては店でギャラリーを開催し、怒和島出身のアーティストが作る雑貨品や、瀬戸内の他の島々の産品も扱う。
田中氏は、怒和島や三津浜だけでなく四国にはポテンシャルのある地域が山ほどあると言う。食からのアプローチだけではなくさまざまな視点からの取り組みを今後も続けていく。
(取材=池添 翔太)
店舗データ
店名 | 島のモノ・喫茶 田中戸 |
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住所 | 愛媛県松山市住吉2丁目8-1 |
アクセス | 伊予鉄高浜線 三津駅から徒歩5分 三津浜商店街中程、郵便局と愛媛銀行の間 |
電話 | 090-6280-3750 |
営業時間 | 11:00~21:00 |
定休日 | 水曜日 |
客単価 | 600円 |
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