香川県観音寺市内。西岡家具店の敷地内に2007年に開業した「CAFE KNUT」が、改装のための休業を経て1月30日にリニューアルオープンした。同店は創業50年の西岡家具を営む3代目・西岡政憲氏が運営している。家具店の創業当時は自社で家具製造もしていたため、その工場として使われていた場所をカフェに改装し開業したのが前身の店舗だ。それゆえ天井が高く、飲食店にしては贅沢な空間使いができるのはこの店ならではだと感じる。また年月を経て醸す独特のエイジング感があり、リニューアル後もそうした“味”は随所にアクセントとして残してある。
カフェを業態の軸にする「CAFE KNUT」は、店内中央に、本棚と一体になった大型テーブルを配置している。これは今回のリニューアルに合わせ、香川県内の家具作家に依頼して造った特注品だそうで、店で一際大きな存在感を放っている。本を片手にゆったりと心地よい時間を過ごしてもらうための特等席だ。対照的に、入口付近には軽く腰掛けられるカウンター席があったり、店内奥には子ども連れのママやファミリーでもゆったりと座れるソファー席、テーブル席がゆるやかに配置されている。地元民が誰でも気軽に利用できるようにと、家具屋ゆえにインテリアの細部までこだわっているのが伺えた。
飲食事業の立ち上げ背景は、本業の家具店の集客が伸び悩んでいた時期に、うまく客を呼び込むきっかけにならないかとの思いで店を開けたという。それまで飲食の経験はなかったが、本業をしっかり守っていくため、試行錯誤しながら少しずつ店を育ててきたと西岡氏は語る。地道な努力の結果、2017年で開業から丸10年を迎えた。右も左もわからずに立ち上げた頃とは、スタッフのスキルやオペレーションもまるで変わった。ソフト面の成長に対し、ハード面が限界を迎えていることに気づき始め、スタッフとの協議を重ねて店舗リニューアルを決意したそうだ。とはいえ、4ヶ月の休業期間を設けることは、経営者にとっては非常に大きなリスクだろう。にもかかわらず、これから先「飲食店としてどう店を続けていくか」と“在り方”を問うたときに、迷わずに決断できたと西岡氏は話し、その理由のひとつに「イートグッド」との出会いがあったと明かしてくれた。
リニューアルを機に「イートグッドライフ」を新たにコンセプトとして設けた。フードメニューに使用するのはできる限り地元産にこだわるため、県内の契約農家から野菜を仕入れる体制を築いた。安全安心はもちろん、身体にやさしく美味しいものを選び、地産地消を通じて地元の産業(農業)と連携する姿勢=イートグッドを追求した。メニューは店長の森谷まゆみ氏が女性ならではの視点で開発を手がけたそうだ。厨房をリニューアルし、これまでより幅広いメニューに対応できるようなり、フードメニューも一新した。売りはタルティーヌ。いわゆるオープンサンドだが、鮮やかな野菜をうまく盛り合わせ、彩りが目を引くフォトジェニックな一品に仕上げている。店名をつけた「KNUTタルティーヌ」(980円・コンソメスープつき)はぜひともオーダーしていただきたいメニュー。そのほか、「こだわり野菜のサラダボウル」(780円)もおすすめ。これ一品でも十分なボリュームだがサラダだけでは物足りない場合には、十五穀米が入ったものや肉が入っているものもある。一方、温野菜では“鉄板グリル野菜”のセットメニューが充実。スープつき、ライスつきなど、ボリュームと好みで組み合わせを選べるところもありがたい。いずれもヘルシーさと地元の美味しさが存分に楽しめるものばかりだ。
「イートグッドライフ」。最後に“ライフ”と付け加えたのは、「人の暮らし=人との繋がり」を感じられる場作りも注力するためだという。「今回のリニューアルで、飲食店として本当の店づくりができたのでは」と西岡氏は語る。同氏の飲食業としてのチャレンジはまだ始まったばかりなのだ。「CAFÉ KNUT」が住民の暮らしを豊かにする存在となるよう、長く長くそこに在り続けてほしいと願うばかりだ。
(取材=小野 茜)
店舗データ
店名 | CAFE KNUT(カフェ クヌート) |
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住所 | 香川県観音寺市吉岡町770-1 |
アクセス | 予讃線 本山駅から車で5分 |
電話 | 0875-25-6183 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 木曜 |
坪数客数 | 36席 |
客単価 | 1200円 |
運営会社 | 有限会社西岡家具 |
オープン日 | 2018年1月30日 |