店は高知市から車で東に向かって40分~50分走った香南市にある。その中でも人通りが少ない山の麓のみかん畑に構えている。
店主の田内福美さんが言うには「物件を探し始めて一番最初に訪れたのがこの場所。ここを見たときにインスピレーションを感じて即決しました。」
田内さんは高知で生まれ育ち、就職も高知市のアパレルショップだったので一切飲食店などで働いた経験が無い。にも関わらず何故カフェをすることになったのか?
30歳の時にアパレルショップのオーナーに「田内さんの好きなようなお店にしてもらって構わない。」と言われ、とても充実した日々を送っていたが、100%自分の理想のやり方で店をやりたいという思いが芽生えた。決意を固めるべく店舗兼自宅を建て、家族と移住をしたそうだ。何のお店にするかは全く決めておらず、その場所の特性を考え、リラックス出来る空間を提供するカフェをしようと決心する。
店内はこじんまりとしており、コンクリートの床・壁により少し冷たい印象を感じるが、こだわりの温かみのある照明により落ち着いた空間になっている。店内は比較的暗く、自然光を大切にしているので店内から見る外の風景は隠れ家からコッソリと外を覗っているかのような、自分だけの特別な空間にいる気持ちにさせる。また田内さんの向日葵のように明るく周りを元気にしてくれる人柄は、この雰囲気ある空間の要素の1つかもしれない。
食事メニューは「チキンライスセット」、「ロールケーキ」のみ。食材は主に高知県産を使用しており、地元農家の人たちとコミュニケーションをとりながら、直販所などから仕入れている。農家の人と直接話せるということは新鮮で美味しい旬食材の情報が入る。チキンもシッカリとスパイスの味がついており美味しいのだが、付け合せのオリジナル調味料を付けて食べると格別だ。ゆの酢と呼ばれる柚子果汁100%と醤油をブレンドした柚子醤油。当たり前だが自分の美味しいと思ったものしか提供をしない。必然的に県内で採れた食材が集まっている。
高知市にある池公園で毎週土曜日に「高知オーガニックマーケット」が開かれ、そこでコーヒー豆や新しい県内産食材を仕入れたりもしており美味しい食材探しに余念がない。
店舗内には少しばかり雑貨も取り扱っている。田内さん曰く「これで利益を得ようという考えはありません。あくまで店内に合うオブジェとして置いています。気に入って置いてるので売れない場合は自分が使用します。」この考えは食品の仕入れにも当てはまる。食材は当然その日使用する分だけを仕入れ、余った場合は自身で食べる。
カフェの経営だけでなく、高知県内のショップや作家に声をかけ、食事・雑貨・ライブをし、自ら店先でイベントを開いたりする。自らイベントを楽しみつつ、地域の盛り上がりにも貢献している。田内さんが好きでやっているそうだが、この田内さんの人柄があってこそ出来ることだと思う。
田内さんの思いは強く、カフェを繁盛店にするつもりはないそうだ。食べログ・ぐるナビなどの飲食店紹介サイトから声がかかるが全て断っている。あくまでお客様がリラックス出来る場所を目指しており、人が押し寄せるとリラックス出来ないという理由からだ。本当は予約制にしたいが、そうすると時間に縛られ、気軽に来店出来なくなるのでする予定は無い。人や車はほとんど通らないので、田内さんにとって最高の立地場所に店舗を構えたことになる。
商売っ気は無く、来店されるお客様1人1人とのコミュニケーションを大事にしている。都心では考えられにくいが、地方、まして郊外で店を構えるには圧倒的に人口の分母が違うので、固定客を増やし人間関係を大切にすることがとても重要になってくる。
(取材=上野真弘)
店舗データ
店名 | DEN |
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住所 | 高知県香南市香我美町山北2871-1 |
電話 | 0887-54-3568 |
営業時間 | 12:00~20:00 |
定休日 | 月曜・第2第3火曜 |
坪数客数 | 15席 |