イタリア料理店 OTTOは愛媛県東温市という松山市から東へ30分~40分走った所に店を構えている。特にこの場所は中予エリアでも人口・世帯数は最下位とお世辞にも立地はあまり良いとは言えない。しかしこの場所にオープンしてから赤字を出さずに売上を順調に伸ばしている。
オーナーシェフ 矢野 松明氏は32歳ととても若い。愛媛県八幡浜市出身で大阪の美容学校に入ったが、イタリア料理の豪快さや楽しさに魅了される。美容学校を卒業後、大阪のイタリア料理店を10年間渡り歩き、修行をする。故郷の愛媛で店を出そうと松山市内を検討したが、移り変わりが早く、客にゆっくりと料理を楽しんでもらい、長く店を続けたいという思いから郊外に出店を決意する。
食材である魚は八幡浜市で漁師をしている父親から仕入れており、店裏に水槽を用意しているのでそこで生かしている。野菜は完全に地元である東温市の野菜を使用しており、直販所や農家から直接購入。パスタは自家製手打ち麺にこだわっている。原価は30%になり、利益をドリンクでカバーしようと考えたが、郊外という立地により夜はドリンクが出ない。いかに食材をロスなく使い、仕入れ量を考えるかがとても重要になる。
客層としては半分以上が松山市からの30代~50代の女性客になる。正直、回転率が低く、ランチはドリンク・デザートを付けてもらって1300円~1500円の客単価を狙っていたが、実際は1000円~1200円に落ち着く。当初はパスタランチ980円、ランチコース2300円の2コース。打開策として少し豪華なパスタランチ1280円をやり始めたがあまり注文する客がいなかった。結局は同じパスタという認識の客が多かったのが原因。そこでピアディーナランチ1280円にしたところ成功。ピアディーナとはエミリアロマーニャ州を代表する郷土料理でサンドイッチみたいな料理になる。パスタと被ることなく、全く違う料理で、パスタランチに+300円でピアディーナ1個を追加することも出来る。客の選択肢が増えたことにより客単価1300円~1500円になり、200円~300円の客単価UPに成功。
ディナーもドリンクやコース料理を注文する客が少なく、殆どの客がパスタを注文。客単価2000円代だった。こちらもランチ同様、テコ入れが必要になり、店側から客へ料理の提案やトリビアを交えながらアプローチ。その結果、料理の追加注文や再来店しコース料理を注文してくれる客が増え、客単価1000円UPの3000円代にまで上がる。
オーナーシェフの願いとしてスタッフへの独立へ向けてのサポートもしている。店で料理の修業をするだけでなく、店の運営状況(数字)を公開し、ミーティングで勉強もする。いずれ店を持つ志のあるスタッフに料理だけではなく経営者としての能力も伸ばそうとしている。運営状況を公開することにより、スタッフに食材・水道代・電気代などのロスが目に見え、自身の給料に響くことを伝えることが出来る。実際、ロスが少なくなり、意識が高くなったと言う。
今後の展開としては店外の余っているスペースにコーヒーショップを計画中。店の真横がサイクリングロードの終着地点になっており、多くのサイクリストが訪れる。しかしライダーの格好で入店することに抵抗がある人も多い為、自転車屋と協力し気軽に入れるコーヒーショップを目指す。自転車屋と協力することで来訪者を増やし、ライダー自身が自然と店の広告媒体になる。気に行ってもらえればランチやディナーを食べに来てもらえ、相乗効果が見込める。
OTTOは客と共に成長することで売上を伸ばすことに成功している。地道に客へ提案することにより、客自身を育てイタリア料理を深く知ってもらう。すぐに結果として出ることはなかったが、3年目にその効果が表れた。その他に生産者と交流を持つことにより客数を増やしたりと努力が実を結び始めている。こういう経験をしたOTTOスタッフが今後どのような店を開くのかも非常に楽しみなところである。
(取材=上野 真弘)
店舗データ
店名 | CUCINA ITALIANA OTTO |
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住所 | 愛媛県東温市北方字田中3355-4 |
電話 | 089-960-6033 |
営業時間 | ランチ11:30~15:30(L.O.14:30) ディナー17:30~23:00(フードL.O.21:00) |
定休日 | 火曜日 |
坪数客数 | 店内50坪 55席 |
客単価 | ランチ1300円~1500円 ディナー3000円~4000円 |