徳島市の中心部から北東に位置する住吉は昔ながらの集合住宅と新興住宅地が混在するベットタウンである。また国立大学の徳島大学常三島キャンパスの存在もあり、多くの学生が居住している地域でもある。町を横断するメイン道路沿いには飲食店が数件ある。学生向けの激安居酒屋やファミリー層向けの定食屋、地元民しか寄らない小料理屋等が点在しているが、繁盛店は数える程。その代わり映えの無さは地方には良くある町並みである。
「sumiyoshi4丁目 COFFEE STAND」はこの町の中心部に昨年12月にオープンした。業態はコーヒー専門のコーヒースタンドである。町の状況からして一見困難な出店かと思いきや、店内は地元の主婦や近隣の学生に加え、隣町からわざわざ車で出向くお客もおり、賑わっている。その様子は、この静まり返った町の中に、確実に新たな価値観を作り出している。オーナーの石氏は神奈川の逗子出身。学生時代を徳島で過ごした後、京都のフレンチカフェや大阪のコーヒー専門店で飲料を学んだ。独立のタイミングを伺う中で、徳島にて物件を見つけ、良き思い出があるこの地に店をオープンした。「学生の時、徳島に4年間住んでいたのですが、すっかり徳島に魅了されました。海や川や山はどれも上質で趣があります。なんて気持ちの良い土地なのだろうと感じていました。ですからお店をやるなら絶対に徳島でと決めていました」と石氏は語る。
それにしても、何故徳島なのか?オーナー出身の逗子は日本有数の観光スポットであり、近隣には七里ケ浜や由比ケ浜、江ノ島と、地方にはない情景を魅力としたカフェ業態も多い。最先端の技術と情報が集まる都心部であり、自らの店を構えたいと誰しもが思う場所である。しかし石氏の見解は違う。「都心出身者からしたら地方は魅力的です。それは単に投資額の差だけでなく、手つかずの町並みや自然がもたらす風景、それは作り込まれてしまった都心には無い、地方の大きな財産だと思います。都心の人も地方に来たら分かると思います。食材や風景は東京や大阪にも負けないポテンシャルがあります」また石氏の言う魅力に地元民は殆ど気づいていない、宝の持ち腐れの状態である。地方も考え方一つで、十分勝負の出来るエリアなのだ。
メニューはコーヒーとスイーツのみと至ってシンプルな構成だ。人気のカフェラテ(500円)やエスプレッソ(300円)には手作りのスコーン(350円)が非常に良く合う。コーヒーはエチオピア、グアテマラ、コロンビア、ブラジル、イタリアンブレンドの5種類の豆を使用。コーヒーは全てフレンチプレスで淹れている。石氏曰く「プレスで淹れると、豆の香りや油分など、豆本来の味が味わえます。また金属のフィルターは油分や粉感が程よく残り甘みも抽出出来ます。来店されるお客様の層が幅広い当店には飲みやすさが一番求められるので、今の提供方法がマッチしていると思います」土日祝日は20代〜40代の女性客で埋め尽くされるが、平日も5割が女性客で子連れが多い。尖った事よりも、地域の住民の生活感を大切にしたスタイルを構築している。
コーヒーを楽しむだけでなく、今後は利用者同士の情報交換や新たなコミュニティの発足の場として利用して欲しいと石氏は語る。生活感と人間味が感じられる小サイズの店舗から生み出される今後の仕掛けに是非注目したい。
(取材=池添 翔太)
店舗データ
店名 | sumiyoshi4丁目 COFFEE STAND |
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住所 | 徳島県徳島市住吉4-1-3 |
アクセス | 国道11号線北常三島交差点を東へ700m |
電話 | 080-3923-2716 |
営業時間 | 6:00~18:00 |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 11席 |
客単価 | 500円 |
関連リンク | sumiyoshi4丁目 COFFEE STAND |