徳島市の東部に位置する東船場町は、東新町商店街と銀座商店街の間に連なる形で形成された町である。町自体は新町川にも面しており、新町川沿いにある「しんまちボードウォーク」では毎月最終日曜日にこだわりの野菜や食品が一同に会する「とくしまマルシェ」が開催されている。マルシェ以外にもここ最近では毎週末、県内のNPO法人が主催するイベントやワークショップが開催され、家族連れで賑わう町として定着してきている。その東船場町の中心部に2012年7月オープンしたのが「O-ba’sh cafe.」である。天然酵母パンをメインにしたランチプレートが人気を呼んでいる町の繁盛店だ
元々は「O-ba’sh crust」という天然酵母パンの専門店としてとして営業をスタート。友人関係であった喜田氏と近藤氏により地域の繁盛店となる。そんな中、「パンの美味しさや、その食べ方、調理方法など総合的に提案する場所が欲しい」と思い、徒歩2分の距離の物件にカフェ業態をオープンさせた。客層は25~35歳の女性や家族連れが主だが、朝に関してはビジネスマンの利用も多い。「O-ba’sh cafe.に来店されるお客様はカフェの空間、食事を目的に来店されます。明確な目的があると感じるので非常に嬉しく思います。近くの商店街やイベント、町にある他店の散策をもっと楽しんで頂けたら幸いですし、私たちのカフェやベーカリーも、町の活性の一役を少しでも担えればと思っています」とオーナーたちは語る。
天然酵母を使用したパンは全て独学で構築したレシピが元になっている。ハード系のパンから惣菜パンからスイーツ系のパンまで、朝食、昼食、間食、夕食と各シーンでの食事に合うよう1日80種類近くのパンを焼き上げ提供している。またランチの日替わりプレートで使用する野菜は県内産にこだわり、地元の若手農家から独自のルートで仕入れている。ちなみに野菜の一部は植物工場で生産されるものも含まれており、工場では店専用のレーンを敷いてもらうことで時期を問わず、安定供給を実現させた。また工場野菜は完全無農薬の野菜であるため同時に安全性も確保出来る。使用する食材は安全であり常に旬のものにこだわっている為、生産者の顔が見え、安全でタイムラグの少ない仕入れの方法を選択したのだ。「通常のパンは恐らく原価率で言うと10%ぐらいかと思います。でもO-ba’sh cafe.ではランチを含む料理の原価率は45%、パンに関しては35%と非常に高いです。素材に対するこだわりは妥協したくありません。コーヒー1つにしてもお客様が満足して頂けるものを提供したいのです」カフェ店主の近藤氏の思いの強さが伝わる言葉だ。
思いの強さは一流の心も動かした。徳島県西部の東祖谷の山中にある「篪庵」からの朝食デリバリーの依頼も大きな話題となった。「篪庵」は東洋文化研究者のアレックス・カー氏が所有する宿泊施設。世界各国からの観光客がやってくるこの場所は古民家ステイをコンセプトにしており、施設内には食事が提供出来るような厨房もなければシェフもいない。以前は地域の仕出しで対応していたが、より良いものを探していた「篪庵」から朝食デリバリーの依頼を受けたのだ。近藤氏はパンと手作りの調味料の他、カフェで取引のある若手農家に声を掛け彼らの野菜の詰め合わせもセットにして提供することを提案。期間限定での取り組みではあったが、こだわりのパンと野菜の組み合わせは健康的で施設利用者からの評判も高く、県外からO-ba’sh cafe.のパンを買いにくる客も増えた。
町のパン屋から始まった夢が今や世界的な観光地の食にまで影響を及ぼす存在となっている事には間違いない。今後はディナーでの営業も視野にいれ、ハード系パンとセレクトチーズやbioワインを主体としたバールの展開も考えているそうだ。o-ba’sh cafe.の今後に注目である。
(取材=池添 翔太)
店舗データ
店名 | O-ba’sh cafe. (オーバッシュカフェ) |
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住所 | 徳島県徳島市東船場1-26 |
電話 | 088-655-2337 |
営業時間 | 7:30〜17:00 |
定休日 | 月曜日 |
坪数客数 | 33席 |
客単価 | 800〜1200円 |
関連リンク | O-ba'sh cafe. (オーバッシュカフェ) |
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