愛媛県松山市の飲み屋街から徒歩で10分程歩いた北藤原町に店を構えている。伊予鉄郡中線土橋駅~松山市駅の間にあり、比較的交通の便が良い立地になる。平日は見事なまでに背広を着た30代~60代のサラリーマンで埋め尽くされ殆ど女性客はいない。県外からの客が毎日4割近く占め、愛媛への出張・接待や紹介での利用が多い。
網元は平成20年オープンになり、愛媛県愛南町の有限会社向田水産が運営会社になる。元々魚屋をしており、店先で捌いた魚を刺身にし客に食べてもらっていたが、次第に客からビールが欲しいとの要望が出始めた。それに応えた結果、居酒屋となった。板長を務める塩沢研氏は網元の魚に魅了された1人になる。広島県出身で全国を転々と渡り歩き料理の腕を磨いてきたが、網元の鮮度抜群の魚を料理出来ることに料理人としての喜びを感じ、愛媛県に腰を据える覚悟を決めた。
看板メニューの鯖と牡蠣はほぼ100%注文される。日本でも有名な鯖が獲れる場所として四国~九州間の豊後水道の鯖を使用している。網元が凄いのは自ら愛南町の御荘湾沖に網で大きなプールを作り、そこで獲ってきた鯖を畜養する技術を持っているところだ。海が時化て漁に出れなくとも、看板メニューである鯖を365日提供することを可能にしている。畜養後、活魚車で運び、鯖専用水槽で生かしている。塩沢氏は語る「このシステムを可能にしているのは魚屋だからこそ出来ることを追求しているから。獲れたての鯖の味を町の人は知らないから、是非その美味しさを知って欲しい。この食べてもらいたい一心でこれ以上新鮮にすることが出来ないレベルまできている。」
牡蠣は御荘産になり30万個用意し10月~4月まで食べれる。魚屋なので安価で鮮度の良い牡蠣を出す事が出来、食べ放題プラン(2800円)だと専用の埋込式七輪テーブルで食べれる。
メニューの中に流通しない美味しい魚介を用意し客を惹きつけてもいる。通称亀の手と言われるセイという貝やメッキあじ、たかっちょなど。注文しなくても興味のある客には食材を目の前で見せて説明をする。また嬉しいサービスとして余ってしまった刺身などを客の希望に沿って無料でアレンジしてもらえる。竜田揚げ、エビチリ、煮付けなどに変わり、残すことなく最後まで楽しめる。酒も120種類近く用意し、どんな客が来ても満足出来るよう準備をしている。
店は全て手作りになり漁師小屋をイメージしている。増築を繰り返すうちに秘密基地みたいになり水槽の上や横に席を設けている。隠れている席や店内全てを見渡せる席にも男心をくすぐられる。更に水槽にはアオウミガメが何匹も泳ぎ、水族館を思わせるのも魅力の1つ。
オープン1年目から口コミで急成長し、現在は月平均1200万円の売上になる。魚原価は自分らで獲るので無料だが、船の燃料代や設備維持を含めると結果50%近くになる。味で勝負をするという武器を認識し、企業努力を怠っていないことにより売上が順調に伸び、今では3店舗を構えるまでになった。今後も増やしていく予定だが、あくまで網元が考えるレベルの従業員が確保出来るまで出店はしない。また塩沢氏の構想としてオリンピック前に東京出店も考えている。
魚屋だから出来ることを追求し、常に客の立場に立つことで心を鷲掴みにしている。本当に美味しいからこそ口コミで広まり「魚を食べるなら網元」と客に認識されるまでになっている。次に繋げたいという気持ちではなく、目の前の客に全力を注ぐ。これからの飲食店は何が店の武器なのかを明確にし、それを追求していくことが勝ち残っていく力になるだろう。
(取材=上野 真弘)
店舗データ
店名 | 居魚屋 網元本店 |
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住所 | 〒790-0033 愛媛県松山市北藤原町2番地1 |
アクセス | 伊予鉄郡中線土橋駅と松山市駅から徒歩3分 |
電話 | 089-933-8308 |
営業時間 | 17:00~24:00 (LO:23:00) |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 120席 |
客単価 | 3000~4000円 |
喫煙環境 | 全面喫煙可 |
運営会社 | 有限会社向田水産 |