「支那そば 三八」は県内に4店舗を展開する徳島ラーメンの人気店である。黒崎店と斉田店は鳴門市内にあり、本店の田宮店と徳島駅前店は、徳島市内に店鋪を構えている。また駅前店以外、全てローカルなロードサイドや入り組んだ住宅地に立地しており、一見集客に難しさを感じさせる。にもかかわらず1日平均300人もの客が、列をなして各店舗にやってくる。平日のランチタイムはビジネスマンで常に客席が埋め尽くされ、また休日にもなれば家族連れの客で店内は大いに賑わっている。
徳島ラーメンと聞くと甘辛く煮付けた豚バラスライスと、濃厚な豚骨スープを誰しもが思い出す。しかし三ハのラーメンはそれらとは全く路線が違うラーメンだ。看板メニューは「支那そば肉入り大盛」(750円)。コクのあるスープは黄濁色系でとろみがあり、ストレート麺によく合う。自家製チャーシューは、余計な脂を除いたさっぱりとした味わい。またサイドメニューで人気の「焼豚炒飯」(380円)はこの旨味たっぷりのスープで味を整えている。子どもや女性受けが良い味付けは、幅広い世代に愛されている。
現代表取締役の岡田氏は、初代である祖父、2代目で現会長の父に次いで3代目となる。大学卒業後の2年間、大手外食産業の「すかいらーく」で飲食経営のノウハウを学び、24歳で三ハに入社した。父の元で一からラーメン作りを学ぶ一方、店鋪拡大にも貢献。平成17年と21年に田宮店、駅前店をオープンさせた後、平成23年に代表取締役に就任した。「企業にとっては人材=仲間が全てです。経営者一人では何も出来ません。家族以上に強い絆で結ばれた組織を作ることが、自分自身が思い描くゴールへの一番の近道だと思います」と岡田氏は語る。「5、6店舗目の出店も視野にいれていきたいのですが、そこでは必ず人材が問題になってきます。出店するにあたっては、その地域でも影響を与えれるような人材を育成したいと思っています。だから出店に関しては場所やバランスを考えます。東京や大阪などは人が多く、企業としては勝負をしてみたい場所ですが、人材育成の場としては疑問があります。人材主体の出店を優先すべきと考えています」
ここまで人材を重要視するのには訳がある。現在の本店であり、三八の拠点でもある田宮店がオープンした年の事だ。店長に任命された岡田氏は自ら厳選したオープニングスタッフ15名と共に新店の運営を任された。しかし半年後、15名居たスタッフはたったの1人になっていた。「当時の自分を振り返ると甘かった部分が多かったと思います。こんな店にしたいという自分の芯、明確なビジョンを持たずに売り上げの事ばかり考えて店を運営していたと思います。地域のお客様に三八のラーメンをどう知ってもらうのか。スタッフ達にはどのようになって欲しいのか。重要なファクターが抜けていたのです」
その後岡田氏はこれまでの方針を大幅に修正、会員向けに発刊する三ハ新聞といった地域に根付いた販促活動に加え、ブログやFacebookといったSNSを利用したPR戦略を展開し、多くの固定客を確保。またPRに関しては岡田氏のみならず各店舗の店長や看板スタッフも独自に情報を発信するスタイルを確立。三ハの看板がSNSを中心にハブ化され、イベントや新メニューのお披露目などが多くの客の目に届くような仕組みとなった。また昨年度は三ハの第二創業元年とし、鳴門市にセントラルキッチンを設立。生産管理を進める事でスープやその他サイドメニューの品質を安定させる事にも着手している。三ハの今後の展開に加え、岡田氏が提唱する「人材主体の店作り」にも注目したい。
(取材=池添 翔太・岡本 哲弥)
店舗データ
店名 | 支那そば 三ハ |
---|---|
住所 | 徳島県鳴門市撫養町黒崎松島157 |
アクセス | JR鳴門線鳴門駅から徒歩22分 (鳴門市営バス 黒崎小学校前) |
電話 | 088-685-7680 |
営業時間 | 10:30~21:00 |
定休日 | 火曜、第3月曜(祝日の場合は前週もしくは翌週に切替え) |
坪数客数 | 35席 |
客単価 | 780円 |
運営会社 | 有限会社 三ハ |
関連リンク | 有限会社 三ハ |