徳島市南新町は市の中心部に位置するが、飲食店等で賑わう繁華街からははずれる地域である。商店街裏の居住区でもある為、人通りも少なく、駐車場もない、飲食だけに限らずこの地域での集客は非常に難しいとされている。その南新町で展開していた人気カフェ「LOZA」が、2月5日にビストロ食堂「椿ダイナー」としてリニューアルオープンした。「気軽さと日常的」をコンセプトに幅広い客層をターゲットにしたダイナーとして、フレンチ・イタリアン・和食等のエッセンスを取り入れた創作料理を提供する。厳しい立地にも関わらず、カフェ業態時から地元民で賑わっていた同店。オーナーシェフ新居氏が提供するスイーツや料理が好評を呼び、オープン以来10年間、繁盛店として実績をつんできた。より多くの客に料理を提供したいという思いから、ディナータイムへのチャレンジを本格的に考え、構想2年で思いを形にした。
料理はフレンチとイタリアンが中心。調味料に醤油や味噌を使用したメニューはいずれも真新しいメニュー。素材にもこだわった結果、現時点で原価率も45%を超えている。「クミンかおるボロネーゼ」(1200円)は後味がスッキリとしたパスタ。2人前からの提供となり、シェアメニューとしてもお手頃な価格帯だ。「いいだこの白ワイン煮」(430円)「ミル貝のわさび和え」(650円)といったサイドメニューは、素材を生かしながらクセのある味付けで既に人気メニューの一角を担っている。扱う食材は徳島産が8割を超えるが、良い物は他県産の食材でも紹介する。「瀬戸内産生しらす」(600円)「富山産生白海老」(700円)といったメニューは県内では食す機会の少ない素材であるため、客からのリピートも高い。「徳島産の素材は他県で高値で取引されています。だから本当に良い物は、実は地元ではなく東京や大阪や京都に流通していることが多い。素材集めはとても苦労します。長年の付き合いのある仲買人の方のところに頻繁に出向き、信頼関係を気づかないといけません。地元食材を集めるのにも一苦労します」とオーナーシェフの新居氏は語る。
飲料メニューにもこだわりをみせる。日本酒は「琵琶の長寿」「上喜元」「霊峰月山」(1合各600円)、「東北泉 瑠璃色の海」(1合1000円)、焼酎は「銀の水 麦」「マルニシ 麦」「六代目百合 芋」(各600円)と近辺ではあまり目にする事のない商品を揃えている。これには多種多様な料理を提供する上で、全ての料理に合うお酒を常備したいという新居氏の思いが込められている。「一杯の呑みやすさ美味しさも大切なのですが、料理と一緒に合わせる事で楽しい食事が完成する、といった目線でお酒は選定しています。今後もメニューの変化に合わせてお酒の種類も変わっていくと思います。酒や料理のどちらかが主役になるのではなく、食事があくまでも主体として考えています」
店内奥のガーデンスペースには店名の由来である「侘助椿」を咲かせている。カフェ時代からずっと枯れずに花を咲かせている植物であった為、店名にしたのだという。テラスでは地元の生花店「グノシエンヌ」と提携し、花の販売も実施しており、ブーケやオーダーのプレゼントフラワーの受注も行っている。「店を通じて、飲食だけでなく各業態が揃ったコミュニティを発信していきたいと思っています。花に次いで美容関係とのコラボも出来たらと思っています」と語る。
イベントなどの取り組みや新メニューの案内はFacebookやブログといったコンテンツを充実させていくことを目標としている「広報はあくまでも自社のSNSやブログでの発信と考えています。紙面媒体だとどうしても情報が垂れ流されるだけになってしまう。ウェブの利点はアーカイブできること。情報が貯まっていつでも引き出せる事は、店にとっても非常に活用しやすいツールです」スマートフォン利用率が高まるなか、時代のニーズに合わせる事も忘れない。地元密着で展開してきた同店のフレキシブルな今後の動きに注目が集まる。
(取材=池添 翔太)
店舗データ
店名 | 椿ダイナー |
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住所 | 徳島県徳島市南新町2丁目22 |
アクセス | 徳島駅から徒歩12分 |
電話 | 088-623-6767 |
営業時間 | 17:00〜23:30 |
定休日 | 火曜日 |
坪数客数 | 28席 |
客単価 | 2500〜3000円 |
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